「あの別荘どうなっているかな…」
脳梗塞後遺症で左片麻痺と高次機能障害がのこる患者さん。リハビリの最中に唐突に放った言葉である。
「Aさん!もう一度別荘行きましょうよ」
ローズにボランティア部が立ち上がった瞬間である。
当社のボランティア部の目的は社会参加と自立支援である。そして、自立の定義を以下に定めている。
「たとえ身体が不自由になり日常生活で介助者のケアを必要としても、自らの人生や生活のあり方を自らの責任において決定し、また自らが望む生活様式を複数ある選択肢から選択して生きていくこと」
そのための現実的な(実現可能な)選択肢を獲得していくために、我々は患者さん利用者さんとともに行動していく。
Aさんは若いころ、いつか別荘を手に入れることが夢であった。夫婦で子育てをしながら、こつこつと貯めた貯金でやっとの思いで夢を現実のものにすることができた。
子育ても一段落し、時間的にも経済的にも余裕ができたときに障がいを負うことになる。
もう一度行きましょうの声かけにAさんの返答は以下であった。
「もう少しリハビリをがんばったらいくよ」
現在の身体状況では別荘に行っても楽しむことができない。それがAさんの主張であった。
「Aさん、リハビリをすることは目的ではないですよ。生活や社会参加、外出をするうえで必要なことを訓練する。それがリハビリテーションです」
その後、別荘で一泊することを実現し、バーベキューや暖炉の火おこしの際、不慣れな同行スタッフを指導する時にリハビリ時のそれを大きく超えた身体能力をみせたこと、2回目以降の別荘旅行に向けて、現実を見据えたリハビリ内容となり、A氏のモチベーションも大きく向上したことは言うまでもない。
医療を受けること。それはその先になにがあるのかが大切であると実感した経験である。
ローズ訪問看護ステーション 高円寺
所長 今田 修一
訪問看護ステーションで、理学療法士として勤務しているものです。
確かに利用者様自身、そしてリハビリ職員自身までもが、【リハビリすることが目的】になっているケースが多いように思います。
何の為のリハビリなのか。そもそも【リハビリ】というものはどういう意味をもったものなのか。
再度自分自身に問いを投げかけてくれたブログ内容でした…!
ありがとうございました!!